ファイヤープロレスリング2(よしもとプリンスシアター)

よしもとプリンスシアター閉館のこの日、さよならイベントをやるわけでもなく、なぜか行われたプロレス者芸人集合イベント。ゲストの天龍は話が達者で、アントニオ猪木ジャイアント馬場ジャンボ鶴田長州力前田日明について忌憚なく語り、9褒めて1貶すブレンドも絶妙の塩梅だった。天龍カッコいい。唯一、両国中学校の同級生だったという三遊亭円楽については「転校初日に「キミ、この学校の偏差値落とさないでね」と言われた」「悪いグループに所属していて、年下の力士をいじめていた」など、悪の教典話しか出なかったのも味わい深い。
そしてRGが披露したワム!のウキウキウェイクミーアップにのせた、とても家族づきあいがあるとは思えないぐらい薄っぺらい天龍あるある「天龍さんは顔面殴りがち〜♪」を聞くなり、なんの迷いもなく手元の椅子をRGに放り投げる。RGに当たって軌道を変えた椅子は、バッファロー吾郎Aに直撃。天龍カッコいい。
さてライブが予定終了時間の90分にさしかかり、それでももうひとつコーナーをやる流れになった時のこと。「ダメよ。もう時間なんだから!」という声が聞こえたので、その方向を見ると、私の3席ほど隣に座っていた荷物の多いオバサンが何やら呟いている。すぐに大人しくなったが、エンディングでは「私、最後だから来たのよ! この劇場も16回も来たんだから!」と大声で舞台に猛アピールを開始。さらに立ち上がって手を振ると、全芸人が見て見ないフリを決め込んでいた。その後、帰ろうとすると劇場の受付に立っていたので、後に並ぶフリをして動向を観察したところ、「これ、この人(と言って、出演者表の博多大吉を指差す)に渡してちょうだい」と、ポケットティッシュ大の、メタリックな、なんだか分からないが、星新一ショートショートに出てきそうな謎の物体を差し出している。それが閉館するよしもとプリンスシアターで、私が見た最後の光景になった。上書き保存されて、数年経ったら「よしもとプリンスシアター=メタリックなプレゼント」しか覚えてないかもしれない。