魁!サイコ塾(ヨシモト∞ホール)

関係者から「やばいライブがある」と内通をいただき、夜の渋谷へ。「若手が下ネタに頼らずにやりたいことをやる」がコンセプトらしいこのライブ、いきなり無眼&全身無毛&でも学帽は着用という芋虫に手足の生えたような容姿をしたBコース・ハブ似の塾長が現れ、客に向かって「おまえらなんでこんなくだらねーライブに来たんだ? 今日でお笑いから卒業させてやる!」と引導渡しを宣言するや、有象無象のサイコ芸人が湧くように登場した。
90年代の巨人軍応援歌を正確に再現するジャイアンツサイコこと囲碁将棋・根建、生レバーをかかげて立ち尽くすメガネサイコことライス・関町、ネタ云々の前に気が利いた名前のダルビッシュサイコこと少年少女・坂口・・・時折、楽屋の方からRGを筆頭にテンションのおかしくなった芸人の叫び声が漏れ聞こえてきて、この劇場が現世と地獄の結界のような気さえしてくる。そして最高の衝撃を与えてくれたのは、そのRGだった。あるあるサイコとして登場した姿はなんと『アバター』に出てくるナヴィの酋長の娘・ネイティリのコスプレで、石井明美の『CHA・CHA・CHA』にのせて「神秘の星・パンドラあるある」を歌い上げたのである。その姿はこちら。正味な話、この1年間でもっとも笑った私は呼吸困難に陥り、『アバター』を見ていて本当によかったと涙した。あの映画があれだけヒットしたのがはなはだ疑問だったが、全世界がRGのために予習していたと思えば合点もいく。
それにしても振り返れば振り返るほど、ションベンを撒き散らす演者にそれでも客が追いすがるようなお笑い界の恥垢イベント。もっともサイコだったのは下ネタを回避する雰囲気の中、5秒に1度は「チンコ」か「マンコ」の単語を発して、最後は「頭にキノコが生えた有名演歌歌手が『兄弟船』をオール下ネタで歌う」という小粋なネタをおろしていた塾長のBコース・ハブ、ではなくて、明日のR-1準決勝で披露するネタを試運転していたサイコ中学生こともう中学生である。