M-1グランプリ2005 敗者復活戦(神宮球場)

神宮球場でM-1敗者復活戦を観賞。青空の下、ロックフェス気分で楽しんでいると、次第に日が傾いて寒気がスタジアムを包みだした。その頃になって、私はある芸人一組が登場していないことに気づく。
その芸人とはハリガネロック。デビュー当時の勢いに驚嘆した以外、とりたてて強い思い入れもないが、今回のM-1では注目せざるをえない存在だった。というのもユウキロックが自身のウェブログで振り返るに、「我々はM-1で他の人よりもいろんなことを経験しました。準優勝。準決勝敗退。トップ出番。トリ出番。不出場」。そしてボケとツッコミをチェンジして挑んだ今回は3回戦で敗退しながらも、復活合格を果たす。その文をユウキロックは「あと我々が残しているのが、敗者復活からの勝ち上がりと優勝です。ラストイヤーで残した仕事をすべてやろうと思います」と締めていた。
M-1は興行論が勝負論を上回る世界ではない。限界を感じて取り替えたツッコミとボケを元に戻してすぐ通用するわけでもあるまい。しかしある種の物語が二人の背中を押しているのは紛れもない事実だ。
やがて陽射しより球場の照明が明るくなる頃、ネタ披露は最後のグループへ。MCが紹介するまでどの芸人がどの順番で出てくるかは正確に分からない中、はりけ〜んず・新井が進行表に目線を落として、出演芸人を読み上げていった。
「というわけでこれが最後のグループです。まずはジャリズム、その次がNON STYLE、マラドーナ……そしてハリガネロック!」
なんと完全抽選制でこの順番とは。先に網羅したヒストリーの中でも予想しきれなかった、敗者復活戦57組のトリ出番。もしやこのコンビは既に追い風に吹かれているのではないか? 私はゆっくりとマイクを下す新井を未ながら、妙な予感に襲われていた。
そして次の瞬間、新井は「で、最後にザ・パンチです」つけ足した。
私は笑った。ハリガネロックが自ら主人公になるドラマを完成させようとした瞬間、突然現れたのがザ・パンチ。最後のドミノを置こうとしたら部屋の壁が倒壊したぐらいに粋な計らいである。そしてネタが始まると、私は遠くから紫にまみれた浜崎の姿を確認して再び笑った。
数えたらこれが今年100本目のお笑いライブ観賞に。ここだけの話、功績を讃えて国からは紫綬褒章を打診されている。まあ別にライブをいくつ見たからといって、目に映る風景が突然変わるわけでもない。神様が考えたギャグを天使が笑って、それをとやかく死神が語りだす。それだけのこと。