キュートン(恵比寿エコー劇場)

昨年末に放送された吉本興業十字軍遠征番組『オールザッツ漫才』。バッファロー吾郎の両氏は、奇しくも互いのHPにおいてこんな感想を同時に漏らしている。「インディーズ臭を失った」と。
今回の『キュートン』で私が抱いた感情もそれ。幕が開いて、くまだまさし・アホマイルド・増谷キートンのキュートンファミリーが下ネタを重ねると、客はひたすら爆笑しっぱなし。何だろうこの違和感は。私は”陽”の空気に染まる会場で”陰”のネタを放つからアングラ系芸人を好むのだが、この日の客席の大気はひたすら”陽”。出すのが厭われる中で出されたケツならともかく、誰もが望む中で放り出されたケツを見てもさして興は乗らないのだ。「下品」ではなく「下品という記号」を求める客に囲まれて、私の気分はひどくげんなりした。
しかし回を重ねたイベントの底力とでも言おうか、最初あれだけゲラに麻痺していた空気も次第に落ち着き、後半からはスベって会場が静寂に包まれたり、舞台からパンツを投げると一部の客が本気で嫌がるいつものキュートンに。そして嬉しいことに最後のオマケ企画としてカリカ前説の「しんじ単独ライブ『ブアアア!!!』」が。石器人のような髪型を掻き毟り、旧石器人のように咆哮するしんじをなんと5分も堪能できた。5分を超えたら保健所に通報しようと決めていたので本当によかった。そしてライブ終了後には「このライブを見た人には”街中でしんじを見たら殴ってもいい”権を与える」旨の告知も。今度新宿で見かけたら後から石槍で突いてやろう。もし先に国が捕獲していなければ。