THE GEESE 第3回単独ライブ「鳥を見たら鳥と思え」(シアター風姿花伝)

以前『アメトーーク』の持ち込み企画でカンニング竹山が推していた「伝説の芸人・ブッチャーブラザーズ・ブッチャーさんにお世話になった東京芸人たち」。番組のHPで同企画の観覧募集をしていて、しかも記されていたのが「ブッチャーの子供たち」という、本日興行を打つのにかかわらずカード発表すらままならないアントニオ猪木の新団体・IGFなみの情報欠乏ぶりだ。さっそく勇んで観覧に応募し、自信満々に収録日を空けていたところ、見事連絡が来なかった。あんな酔狂な企画、俺以外の誰が応募したんだよ! まさか本当にアブドーラ・ザ・ブッチャーのご子息が登場したんじゃあるまいな。収録日とIGFの旗揚げ戦は1日違いなので油断はできない。
そんな失意の空白を埋めるため、当日券を求めてTHE GEESEの単独ライブへ。この会場のシアター風姿花伝、西武新宿線の下落合駅から歩いて8分、都営大江戸線の落合南長崎駅から歩いて10分、JR目白駅から歩いて18分という都心の刑務所候補地としてAランクがつく陸の孤島で、歩いて向かう客に「本当におまえはTHE GEESEが見たいのか?」と試練を与えているようだった。思えば昨年のシティボーイズの池上本願寺公演も一晩かけて山中を踏破しなければならなかったし、これは事務所の方針なのだろうか。
さてライブの内容はシチュエーションそのものではなく言葉の設定をいじり倒すトリッキーなコントを連発。そのしたたかな安定ぶりは、正確なラップを刻む中距離走者を見てるようだった。こんなところにもブッチャーさんの種子が花を咲かせてるなんて!(事実無根)
ただTHE GEESEは毎回単独で一発ギャグでわざとスベるコントを披露するのだけど、ギャグをやる際に自意識が投げ出せてないわ、客もスベリを見る姿勢ができてるわで、今まで2兆に及ぶスベリの現場を見てきた私から言わせれば、全然スベれていないのだった。スベリが事故なら、まだシートベルトをはずせない段階なのである。本当のスベリというのは、〆さばヒカル追悼興行で全客が「今日はなんでも笑って偲ぼう」と胸襟を開く中、イッセー尾形みたいな一人芝居を始めたはいいがキンキンに反応がなく、目を泳がせてネタの途中ケツをまくって消えたブッチャーさんのことを言うんだよ! THE GEESEは別の方向を歩んでほしい。