『立川談志の正体』出版記念落語会(浅草ヨーロー堂)

快楽亭ブラック著『立川談志の正体』を買おうとしたら、出版記念落語会があるらしく、しかも入場料1600円で本までもらえるとのこと。なんだろう、この『猿岩石日記』を買ったら有吉弘行トークライブを見れて、鹿砦社のジャニーズ本を買ったら嵐のコンサートに行けるようなゴージャス感は。迷わず浅草へ向かう。
すると東京東部に潜む私のようなハイエナ野郎が集結したのか、レコード屋2階の会場は大盛況に。はたして落語会は軽く談志の話をしておしまいかと思いきや、『六尺棒』『七度狐』『お若伊之助』の三席で二時間もかけるサービスぶりだった。
さて『立川談志の正体』を読むと、期待通り、談志の金に執着する黄金餅なエピソードが満載。こうした本は通常「悪口ばかり書いて」という非難を浴び、その後、時折スパイス的に挟まれる師匠礼賛をよすがに「でも、悪口の裏にある愛情は隠せないよネ」と好意的な解釈に着地するはずなのだが、さらにその先に待ち構える「噺家なりの供養だとか洒落だとか言ってるけど、でも結局は嫌いなんでしょ?」地点が明滅しているのがすごい。師匠への愛憎の「愛」が主題でもなく、かといって「憎」をごまかすためのアリバイでもなく、長年時間を共有したしがらみが腐敗分解してできあがった石炭のように見える。
またこの本は終盤にさしかかると「立川談志は弟子のキウイを真打にしたことで晩節を汚した」のロジックのもと、かっての弟弟子の増長をただただなじるブラック落語「キウイ調べ」を掲載して本を締めようとしたり、この日の落語会でも「七度狐」で嫌いだったと振り返る立川文都を主人公として登場させ、そのポコチンを肥溜めに突っ込ませて腰を振らせたり(ちなみに文都は故人)、全くもって容赦ないのである。もう談志関係ねーじゃねーか。
それにしてもこの憎悪のエネルギー、ブラックが立川流から追われることとなった最大要因・吉川潮大先生が亡くなったらどうなるんだろう? やっぱり談志の得意演目「らくだ」のように、死体にかんかんのうを踊らせるのかな。そしてその後、ポコチンを肥溜めに突っ込ませて腰を振らせるのかな。