東京吉本若手漫才協会本公演〜夏のいろいろ編〜

東京吉本若手漫才協会とは、私の勝手な想像によれば、M-1終了後、気がつけば必要以上に漫才のレベルが上がってしまった若手芸人たちのエネルギーをかき集めて、あわよくば金に変換させようと目論むロシアンモンキー中須が設立したまではよかったが、立ち上げから2公演連続で自らがスベるという想定外の事故が起こったため、後輩芸人たちに「あれは何かの間違いや」と説得に向かい、そのどさくさにまぎれて金を借りて結局のところ目的を達成しているTHE MANZAI非認定ながら昭和認定の団体である。
そんなしくじりが許されないロシアンモンキーは、会長特権を活かし、自らのトリ前に比較的キャリアの浅いトンファー、タモンズの2組を配置。スローカーブ2球の後には130キロのストレートも速く見えるオリックス・星野投法で準備万端である。なのに伸び盛りのトンファーとタモンズがスローカーブどころか、ツッコミがハマりまくる150キロの高速スライダー的漫才で豪快にウケるものだから、ロシアンモンキーの悪運はいよいよ尽きたかのように見えた。しかしそこは手負いの猿。普段の余裕をかなぐり捨て、ツッコミの川口が夏合宿レベルの豊富な運動量で動き回り、オール巨人師匠言うところの「舞台は汗や」「漫才は筋肉や」「筋肉痛にはポピーや」という笑いの原点に返り、見事、実力通りの爆笑をせしめたのだった。
そしてここで「めでたしめでたし」で終わらないのが、傷口は骨が見えるまで広げる漫才協会のいいところ。エンディングでウケたことにご満悦の中須会長が、「おい、犯人!」とLLR・福田を呼んだのである。そう、甲子園の土をテーマにしたLLRの漫才は、体感時間15分の中にボケ数4つという漫才観測史上類を見ない画期的漫才でピカピカにスベり、暑さにうだる下北沢の気温を3度も下げたのだ。中須から堂々の後継者指名されたLLRが、今後漫才協会の柱、もしくは人柱になることは間違いない。
それにしてもこのイベント、M-1以降の漫才を模索し、みんなで王国を築く方向性だった気がするのだが、いつの間にか共産主義が3日で崩壊して責任転嫁で殺しあうカンボジアのようになっている。トンファーとタモンズは着々と亡命の準備を進めているかもしれない。