青山円形劇場「鶴瓶噺2005」

初めて笑福亭鶴瓶トークライブへ。終盤に若干の決まりごとを入れながら、フリーで2時間・5日間を別内容で一人語りする驚異のライブである。
はたして鶴瓶の一人語りは、時代を切り開くような新しいセンスがあるわけでもなく、中にはそれほど笑えない話もちらほらと。しかしどうしたって面白いのだった。話が転がったかと思えば元に戻り、1時間が経過したあたりから、存在するのかしないのか定かでないライブの全体像がぼんやりと浮かびあがる。点が線につながる面白さもさることながら、鶴瓶が30年間培ってきた芸や経験が9m90cm積み上げられ、10mに届くか届かないかという笑いの攻防戦を見せられている感じだ。そしてその分厚い堆積を隠したまま鶴瓶は舞台に上がる。円形劇場なので垣間見れた対面の客はどれも食卓を囲むように弛緩した笑顔で、演者も客も幸福な空間に置いているのだなと思う。
そして劇場を出たところ、なんと若い男の出待ちが群がっているのである。「ぬかる民の残党がこんなところに!?」と驚いたが、全員が隣の青山劇場で催されていた「アニー」の子役目当てだった。さきほどの客と正反対にタイトなスマイルを浮かべて撮影に励む男たち。子役に何cmの堆積があるのか、私は知らない。