カルピス一社提供番組『ゲンエキ』

ゲンセキ』は若手芸人を発掘する番組で、MCは木梨憲武。そのオンエアにおけるほとんどの間、木梨は少年のような、という陳腐な表現が差し支えないほどにキラキラした笑顔を浮かべている。この笑顔を「ノリさんぐらいのステージに立つと若手に優しい」と解釈するのは簡単だ。でも私はそうは思わない。
というのも木梨は推薦人として出演している芸人のマネージャー陣に「いいっすね!」と嬉しい一言を漏らす。よく笑っているわりに「面白い」や「笑った」ではなく、「いいっすね」なのだ。
またフリートークで若手とからんだ際に、「TBS的にどうなの」「赤坂詳しくなったらしいじゃない」というフレーズも必ず発する。つまるところ石橋が隣にいなくても、結局、木梨およびとんねるずの主語は未だに”業界”。だから判断基準である”私”が”面白い”と思うわけではなく、”業界”という主語に呼応した”いいっすね”という言葉が多用されるのである。業界的にはアリ。この20年、とんねるずの口から何回も零れてきたこの言葉は、番組の核とそっくり重なる。
きっとM-1グランプリ松本人志に評価されることと、木梨の賞賛は全く意味が違うのだと思う。「ノリさんに誉められた」ことは若手にとって、絶対的な笑いの免許皆伝ではなく、とんねるずの番組=業界が歩み寄ってきた証明でしかない。次のカーブを曲がれば叙々苑ってなもんである。その向かい側にあるのはダーツバーか。知らないけど。というか私のイメージマップが貧弱すぎた。すまん。
話を戻すと、もともと番組の骨子は「今秋に始まるコント番組のレギュラー枠を競わせる」というものだ。対・客よりも対・業界に重きが置かれた環境は、木梨にとってまさにホームグラウンドだろう。俳優業や、素の部分を切り売りしてインタビューする『木梨サイクル』のアウェイから戻った(自分の名前が冠についてるのに敵地というのもおかしな話だが)ため、『ゲンセキ』ではついつい笑顔が漏れてしまうのかもしれない。
それにしてもオリエンタルラジオというコンビは、「面白さ」よりも「売れそう」の部分だけが早くも加速している感じだな。もう今回は思索のトーンがナンシー関そのものだったので、文体も寄せてみました。そう申告されたところで、どうしたもんかって話ではあるが。