お笑い世界遺産認定会議(シアターD)

富士山が世界遺産に登録される数週間前、演芸界の世界遺産を認定するライブが行われていた。当然、チャップリンの『独裁者』、古今亭志ん生の『お直し』、やくみつる先生の4コママンガなどが検討されるのかと足を運んでみると、候補に挙がっていたのは「えんにちのヤクザ&シャブ漫才」「ガリバートンネル三須による尻の筋肉を用いた『笑点』のテーマ演奏」「コンマニセンチ・竹永が長年つけている日記を盗み読む」など、世界遺産というより、どこに持っていても換金できない北朝鮮紙幣であふれかえっていた。
それもそのはず、この世界遺産認定において裏で糸を引いているのはユネスコならぬ作家・山田ナビスコ先生(水道橋博士のようなレトリックだ!)。その東京吉本地下芸人界を代表する巨魁の身勝手な人脈と選定によって芸人がかき集められた模様である。そもそも司会がナビスコ幕府の右大臣左大臣であるギンナナ金成とポテト少年団菊地だし、「東京の陸地面積の0・6%を占めるに過ぎない劇場に、売れない芸人の74%が集中している」でおなじみお笑い沖縄米軍基地のシアターDで、さらに出演数が多い芸人のために客席の後方1/3が関係者席という普天間システムの採用も山田ライブ名物だ。どうも諸事情によってこの春から先生が関わるイベントが少なくなったらしく、凝縮した熱量と怨念が会場を支配していて、私はありもしない山田組の代紋を舞台上に見た気がした。
さてこの日、めでたく世界遺産に認定されたのは「若月の漫才」のみ。理由はただひとつ、ツッコミの若月徹が鑑定人のまちゃまちゃの好みだから。今後、世界遺産ライブが続行されても、鑑定人が変わらないかぎり、モンティ・パイソン藤山寛美先生、フラッシュモブに参加してるヤツらが認定される可能性はほとんどなさそうである。