1986年のマリリン・マンソン

本田美奈子が亡くなった。
私はその全盛期を見ていた。「1986年のマリリン」を皮切りに「SOSTTE」「あなたと、熱帯」を歌い上げながら折れそうな痩身をさらに細くやつし、モーターを装備したかのように腰をキュインキュイン振る様は、何か”踊らされてる”感が拭えず微妙なエレジーを発散。来るもの拒まない思春期でもオカズとして持て余す存在だった。さすがに「SOSOTTE」は有効利用したけど。
そしてメディアで見かける機会が減った頃、唐突に『ミュージックフェア』で朗々と歌いあげている彼女を目撃して、驚いた。密やかに芸能活動していたからとか、改めて歌が上手だったからという理由ではない。びっくりするほど、その姿が凛としていたから。大体「私には歌しかないんです!」と宣言して火中に身を投じるアイドル歌手は黒焦げになって終わるものなのに、彼女は「アイドル」の部分を焼失して「歌手」だけ残っていたのだ。「つばさ」を歌う本田美奈子は、凛としていた。
去年「画数を一つ増やしたい」と”本田美奈子.”にした時は「”本田し美奈子””朽田美奈子”もあるよ!」と提唱してきたし、私がDJをする時の名前「dj honda 宗一郎」は説明するまでもなく彼女から影響を受けたもの。とにかく今は『宝島』に掲載されていたWILD CATSとニューロティカの対談が読みたいのだけど、いくら本棚を探しても見つからないのだった。せつない。
合掌。